ヘイ、気分はご機嫌かい
10月のある晴れた朝、ペダルを漕ぐ。
じっとしていると肌寒いけれど、ペダルを漕いでいると寒さはどこかへ行ってしまう。
まだ力強さの残る陽射しが、肌と服との間の空気を温めて、それが僕にまとわりつく。ハンドルを握る手は、風に当たって冷たいけれど、体はもわっと暑苦しい。走りながら袖をまくる。
県道53号線から有間ダム方面に入ると、そこから一気に勾配は増す。上り坂だ。右手に武州世直し一揆の壁画、左手に売店やませみ、さわらびの湯へ通じる広場を見送りながら、なおも坂道を上る。左右には杉林。日陰にもかかわらず、朝の光は、林やアスファルトに描かれた路側帯の線や制限速度の数字を青く浮かび上がらせている。
坂を登りきると景色が開ける。ここは有間ダム。ダムによって出来た湖は、その名を名栗湖という。
こんな朝早くからおっちゃん達は釣りをしているし、クマタカを狙ってカメラを構えてるおっちゃんもいる。が、不思議とおばちゃんは1人もいない。
湖をぐるりと一周廻って、売店やませみでオレンジムースを食べて帰路につく。帰りはつーっと下り道。行きはひいひい帰りはよいよい。
ご機嫌な1日のはじまりなのだ。